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収益認識基準の会計方針の変更事例1
2021年10月08日 [会計・税務]
収益認識会計基準が2021年4月1日開始事業年度から適用され、3月決算の上場会社は今年の第1四半期(2021年6月)から適用が開始されました。3月決算の第1四半期報告書から会計方針の変更事例を見てみると業種ごとに特徴的な変更が見受けられます。
変動対価(リベート、顧客に支払われる対価等)
リベートは、販売促進を目的とすることから販売費として計上していましたが、収益認識会計基準では変動対価として取引価格から控除することになります。また、顧客に支払われる対価(チラシ協賛金、カタログ協賛金等)は、顧客からの受領する財又はサービスの時価を合理的に見積もることができない場合には取引価格から減額するとしています。これらは日本的な商慣行で、食品メーカーと卸業者及びスーパー等の小売業者などの階層的な取引に多く、変更事例として記載されています。同様に医薬メーカーで変更事例としても記載されています。
カスタマー・ロイヤルティ・プログラム(ポイント制度)
ポイント制度は、企業が顧客に売上に応じて付与するポイントで将来の商品またはサービス等と交換する制度で販売促進の手段として利用されています。ポイント制度は、負債性引当金の要件を充足しているとして従来は販売促進引当金として計上するとともに引当金繰入額を販売費として計上していましたが、カスタマー・ロイヤルティ・プログラを顧客に提供しているとして履行義務に識別し、ポイント発行時に契約負債を計上し、ポイントの使用に応じて収益を認識する方法に変更しています。ポイント制度は、小売業、通信業、航空業、サービス業等に活用されており、変更事例として記載されています。なお、ポイント制度は、自社ポイントのほか他社ポイントを利用するケースもあり、他社ポイントの発行についても自社ポイントと同様に履行義務として区分している事例があります。
返品条件付き販売
返品条件付き販売は、負債性引当金の要件を充足しているとして従前は返品調整引当金を計上していましたが企業が権利を得ると見込む対価の額で収益を認識するため取引価格から返品見込み額を控除することになります。なお、取引価格から控除する返品見込み額は返金負債に計上し顧客から回収する見込みの商品等は返品資産に計上することになります。返品条件付き販売は、医薬品メーカー、出版業界などのほか、人材紹介の早期退職に伴う返金条件などで見られ、変更事例として記載されています。
履行義務の充足(一定期間)
仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行う工事契約は、従前は工事進行基準が適用され、工事の進捗に応じて収益を認識していましたが、請負契約でも労務請負は対象外であり、また、委任契約、派遣契約等も工事進行基準の適用対象外でした。収益認識会計基準では会計基準第38項の3つの要件のいずれかを満たす場合一定期間にわたり履行義務を充足し収益を認識することとなります。この結果、人材請負、ソフトウェアの委任契約、派遣契約、並びにコンサルティング業務で、従来、完成基準で売上を計上していたものが一定期間にわたり履行義務の充足に従って収益を認識する方法に変更になっています。
なお、従前から工事進行基準を採用している会社にあっても、進捗度を合理的に見積もれない場合工事進行基準が適用できなかったが、履行義務を充足するに際して発生する費用を回収することが見込まれる場合、原価と同額を収益として認識する原価回収基準を採用することになります。建設会社等の工事進行基準の適用会社では、工事進行基準から一定期間にわたり収益を認識する方法に変更、進捗度を合理的に見積もれない場合に原価回収基準を採用していると変更事例として記載されています。

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